「初めに言(ことば)ありき」松居直さんの本より

秋到来。見渡せば、いたる所にヒガンバナが真っ赤に咲いています。仏花ともいうようですが、緑の中にきれいですよねえ。

まずは松居直さんの本を読みました。

先日届いた松居直さんの新刊『私のことば体験』(福音館)を読みました。

「こどものとも」の初代編集長であった松居直さんの自伝なのですが、とても心に残る内容でした。さすが!松居直さんだと・・・

聖書:初めにことばありき

戦後、生きる意味が大きく変わり、自分を見失う中で、トルストイ『戦争と平和』に出会います。そして同志社大学で学ばれた松居さんはそこで初めて聖書と出会います。聖書の朗読を聞き、ことばに命があることに気づくのでした。

それは、ヨハネによる福音書第1章「初めに言(ことば)があった」という箇所でした。これはダビデ保育園の園長先生が「子ども図書館」を設立されるときにも基となった聖書の言葉でした。

松居さんは「子どもを育てるということの鍵は、ことばだと思うんです」とおっしゃています。それで彼は子どもの本を作っていると。ことばで子どもたちを抱き、生かさなきゃと思ってと。

新しい児童文学へ

明治大正期、「あかいろうそくと人魚」の小川未明や「ないた赤おに」濱田廣介などの作家たちの作品が多く出ました。でもそれは大人の視点で上から見たもの。もう上から見下ろすものはけっこうと思われたそうです。

rosieさんも児童文学の講義を受けましたが、巌谷小波「こがね丸」から始まり、赤い鳥時代、小川未明、濱田廣介と現代に続く作品を順に読み直したことがありました。

そのときに正直に「教えられているみたい」と感想を言えたことが印象的に残っています。そう言ってもよかった講義だったのでした。今にすれば貴重な時間だったと思います。世の中が認めた作家に対して、「おもしろくない」と言えたのですから。

こどものとも創刊より

まず、子どもたちに安価でいいものを手渡したいと発刊し始めたのが月刊こどものとも。

第1号は堀文子さんの絵による「ビップとちょうちょう」でした。物語は輿田準一さん。最後のページはこれです。蝶々を逃してあげたことを聞いて、「それはよかった。へいわのはるだ。」と町長さんがビップ坊やを抱き上げます。

戦後の時代、「平和ということばは、祈りでした」と。みんなの祈りだったのですね。

なんでこの本をrosieさんが持っているかと言えば、復刻版なんです。

1989年10月に発刊されています。値段は25,750円となっています。

なんでこれを買えたか?マローンおばさんがその頃、「ブラウスでも買ってあげるから」と言いました。それで、「お義母さん、私はブラウスはいらないから、ほしい本があるので代わりにそれを買って下さい。」と・・・厚かましくも。

rosieさんにはブラウスよりもこれでよかったなあ😉

多くの作家、画家たちとともに作り上げた絵本たち

<寺村輝夫さんの「ぞうのたまごのたまごやき」 長新太 絵 福音館>

「教えるとか、上から子どもに何かを諭すとか そういう気配が全くないんですよね」ただ面白いから子どもに語っている。

子どもと対等に向き合う 子どもの視点で書かれた作品を出そうと思ったそうです。物語にしても絵にしても当時の日本の絵本の流れとは違うものを作りたかったのだそうです。

そして石井桃子さんとの出会い。

当時、石井桃子さんは岩波書店におられて、「岩波子どもの本シリーズ」を出されていました。「くまのプーさん」を翻訳されたのも彼女です。

<ちいさなうさこちゃんシリーズ> ピーター・ラビットの翻訳も。

言葉遣いのあたたかさがあり、生き生きとしたものがこちらに伝わると。

そして瀬田貞二さんの豊かな日本語。

<三びきのやぎのがらがらどん>

そして、かこさとしさんの「かわ」

最後の海の場面には初めは水平線が一直線に描いてあったそうです。それで松居さんが言ったんですって。

「加古さん、犬吠埼の先から太平洋を見たことがありますか」「あそこから見ると、太平洋は曲線になって見えますよ」って。

さすがあ!松居さん。そうなんですよねえ。出ましたね!犬吠埼!

写真を載せたかったのですが、我が家の「かわ」は孫の手にあるようです。松居さんも言っていました。代々、渡していけばいいと・・・

そして赤羽末吉さん、初めての作品が「かさじぞう」

そのときにも文句を言ったそうです。「扇面に絵を入れて印刷してほしい」

でも出来上がったものは扇面に合う絵は一つしかなくて、「俵屋宗達は扇面をいかして描いていますよ」って・・・出た!俵屋宗達💕

とまあ、いろいろと文句も言いながら、画家の将来も考えながら作って行かれた絵本が今も日本の子どもたちを育てています。

出版文化の危機

「福音館書店ではベストセラーは作らなくてもいい。十年間売れる本を考えてくれ、と言ってきました。」

「21世紀、これからの子どもをどうやって育てていくかが問われています」と。

ブルーナやピーターラビットが出版された頃の欧米は非常に優秀な編集者が活躍されていたのだそうです。

ダビデ保育園の園長先生も言われました。「あの時代はいい時代だったのだ」と・・・

この松居さんの本は2009年4月から2011年3月号の母の友にに連載されたものをまとめたものです。ですから、もう10年の年月が流れています。

「いろはがるた」や「百人一首」のように自然に、いつのまにか、日本語の調べが身につくこと。本当に素晴らしい日本語を耳から聞くことの重要性を松居さんは語っています。子どもたちが・・・

長年、子どもの本の出版に携わってこられた最後の総まとめ本だなあと思いつつ、読みました。松居さん、大事な宝物をありがとう。

高松でご馳走させてもらったのはお安いうどんだったけれど、あれが一番美味しいんで〜す😉

では みなさま ごきげんよう。

 

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