松岡享子さん、サンタクロースの部屋をありがとう💕

rosieの図書室

(写真:福音館ふくふく本棚よりお借りしました。)

松岡享子さんが残してくれたもの

昨年秋から気になっていたんです。松岡享子さんのこと。

財団法人 東京子ども図書館名誉理事長であられた松岡享子さんが、1月25日、とうとう亡くなられたそうです。86歳。

作品にはパディントンシリーズ、おふろだいすき(福音館)、しろいうさぎとくろいうさぎ(福音館)、うさこちゃんシリーズを石井桃子さんから引き継いだものなどなど。

たくさんの絵本の翻訳や著書があります。

rosieさんが初めて素話を覚えたのも、東京子ども図書館のお話のろうそくより、「エパミナンダス」でした。

数ヶ月前に、長野県茅野市にある諏訪中央病院の緩和病棟に入院されたことは情報としては知っていたので、ずっと案じておりました。

やはり、その日は来たか・・・

rosieさんなどは全然面識もなく、お話ししたこともないのですが、心の中に大事なものを残してくださった方なので、なんだか涙がこぼれそうです。

サンタクロースの部屋の本との出会い

以前にもこの本はご紹介したと思いますが、今回はrosieさんの色褪せた本の写真でご紹介します。

「サンタクロースの部屋」 松岡享子著 (こぐま社)

初版本なので、もう40年ほど前に購入しています。

当時、子どもの本屋さんができ始めたばかりで、神戸か?大阪?にできた子どもの本屋さんへ時々寄っていました。そこで購入したのではないかと思います。

まだ保育士としてスタートして数年。いろいろな悩みを持っていました。

子どもたちに一体何を伝えれば良いのか?自分の中に深い保育思想がないことにも気づいて、大学へ戻り、学び直している頃でした。

関西では灰谷健次郎さん、今江祥智さん、上野暸さん3人が児童文学を熱く語っている頃でした。児童文学の講義の中で、次々と作品を読んではメチャクチャに批判し、赤い鳥時代の作品も「おもしろくない」「子どもにはもっと明るい楽しさを!希望をこそ伝えるべき!」なんて、クソ真面目に育った日本人の殻を破るべく、討論しあったことを懐かしく思い出します。

小川未明の「赤いろうそくと人魚」とアンデルセンの「人魚姫」を読み比べてみたのもこの頃です。rosieさんはやはりアンデルセンの方が好きでした。

人魚の恨みつらみでラストが終わる?人間の欲が勝つ?子どもに読ませる作品がこれでいいの?疑問を抱きました。何しろ批判OKの授業でしたから(笑)

子どもにはどんな本がいいのか?

1冊1冊、自分の目で読んで、素直な感想を出してOK!改めてフリーダムな空気に放り出されたのでした。

心の収容能力と目に見えないものを信じる心

その本の中で、松岡享子さんがアメリカの児童文学評論誌の一文を紹介されていました。

「幼い日に、心からサンタクロースの存在を信じることは、その人の中に、信じるという能力を養う。わたしたちは、サンタクロースその人の重要さのためではなく、サンタクロースが子どもの心に働きかけて生み出すこの能力のゆえに、サンタクロースをもっと大事にしなければならない。」

そして松岡享子さんはこう結んでいました。

「この能力にはキャパシティーという言葉が使われていた。これは収容能力を意味する。一度サンタクロースを住まわせた子はその空間は大きくなっても残る。

つまり目に見えないものを信じるという心の働きが、人間の精神生活のあらゆる面でどんなに重要かはいうまでもない。のちに、いちばん崇高なものを宿らせるかも知れぬ場所が、実は幼い日にサンタクロースを住まわせることによってつくられるのだ。

サンタクロースに限らず、魔法使い、妖精、鬼でも仙人でも・・・なんでもよい。幼い心に、これらのふしぎの住める空間をたっぷりとってやりたい。」(略)

このサンタクロースの部屋の意味がrosieさんを納得させました。ストンと胸に落ちました。

以来、子どもにとっていい本とは何か?本との出会いを子どもたちに作ってあげること・・・これがrosieさんの原点になりました。

その実践はダビデ保育園にて続きました。

その後、故郷に戻り、就職したのが「ダビデ保育園」でした。

ダビデ保育園は田舎なのに(失礼!)、充実した子ども図書館を持っていました。

それは園長先生が聖書:ヨハネによる福音書1章1節「初めにことばがあった。言は神と共にあった。言は神であった。」というみことばの元に作られたものでした。

ダビデ保育園物語をめくってみると、1977年(昭和52)に初めて松居直さんをお招きして、『子どもと絵本』という講演をしていただいた時からのスタートのようです。

絵本と児童書を購入、その翌年から図書館を作り、貸し出しを始めたそうです。

「お母さん、子どもを叱ることもあるでしょう。でも毎日、夜寝る前には絵本を読んでやって下さい。」これがただ一つの親へのお願いでした。そして、親はそれを実践したのでした。それだけです。

rosieさんが就職したのは、1980年です。古い写真を見ると確かにかつての同僚が写っていました。当時は狭い部屋にたくさんの選ばれた絵本が並んでいました。

その後、新しい教会堂が建った時には広く、絨毯を敷いた立派な図書室が生まれました。

当時、生意気なrosieさんの目にも園長先生の本を選ぶ眼は確かでした。松居直さんの著書を読んでしっかり学ばれたのだと思います。

今でも園長先生が話題に出すのは「あの時はびっくりしたわあ。無認可の予算も厳しい保育園にやってきたあなたは、保育園ではなくて、子ども図書館で雇ってもらえませんか?」と言うんやからなあ(笑)「できるわけないやろ!」って。

すみません!生意気で・・・

涙とともに呪文のように言い聞かせます。

松岡享子さん、あなたの言葉、心に刻みます。

「子どもたちには、ぜひ年齢に応じて時間の感覚を育て、長い歴史の中に自分を位置付けて、心の根を深くおろし、安定した気持ちで生きていってもらいたいと願う。そして、それを何よりも助けてくれるのは、本だと思う。」

松岡享子さん、本当にありがとう💕💕💕

それでは みなさま ごきげんよう。

 

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